何か悪いものを塞いでた穴


去年の夏、本当に怖い目にあった。

夜中に花火をしていたら、友人Aが「じつは近くに心霊スポットがあるんだぜ」
と言い出したから、肝試しをすることになった。
連れてかれたのは、都内にある林。
すぐそばに民家があって、なんか全然怖そうじゃないなと思ったのを覚えている。
Aが言うには、この先に防空壕があり、そこに出るのだという。
歩いて行くと、砂利道の先にそれらしきものが見えてきた。

草むした崖に大きな穴があいていて、
年代物のボロボロの木戸が取り付けられている。
「なぁ、でもこれってなんか違うくね?」と友人の一人が言った。
たしかに、防空壕というわりにかなりボロいが前に鳥居がある。
「中で亡くなった人がいるから、そのせいじゃない?」と言い出したやつがいて、
気にせず続行した。
木戸にはしめ縄がしてあったようだが、前に肝試しに来たやつのせいか、
切れていて地面に落ちていた。
デジカメ持ってたやつがいたので、撮影しつつ中に入る。
中はひんやりとして、ちょっと肌寒いくらいだった。

途中のコンビニで買ったライトで照らすが、本当に土を削って作っただけで、
中には何にもない。
そんなに深くないので、すぐにどん詰まりまで来てしまう。
「なんだよ、ちっとも怖くねーじゃん」って皆で笑っていたら
ここを紹介したAが責任を感じたのか「ほんとつまんねー」って奥の土壁を蹴った。
すると、ズボッって音がして、Aの足が壁にめり込む。
「うおっ!」と叫んでAが足を引き抜くと、
土と一緒に驚いた虫が地面に転がって逃げてくのが見えた。
蹴ってできた穴の周辺がパラパラと崩れたことで、ここで行き止まりなのではなく、
奥にさらに空間があることがわかった。
「スゲー、なんだろこれ!」
盛り上がる友人たち。何人かは面白がって、Aと一緒に壁を壊しだした。
酒が入っていたせいもあるんだけど、車を運転する関係で俺だけ素面だった。
そのせいなのかな。Aが穴を開けた時点で、俺はゾワッと鳥肌が立っていた。
首筋に冷たい冷気を当てられたみないに、ブワッて。
急いで「なぁ、やばくないか?」って言ったんだけど、
壁を壊している連中は聞きゃーしない。

どうしようかとキョロキョロしていると、
傍にいた女の子がうつむいて青い顔をしている。
話しかけても「…あ…うぅ」とか要領を得ない。
なので、彼女を介抱するために、俺たちは二人でリタイアすることにした。
もうすぐ穴から出られる、というときになって奥から
「ウゲー!」とか悲鳴が聞こえてきた。
どうしたのかと思って見ていると、全員がこちらに向かって走ってくる。
勢いに押されて、俺たち二人も走りだした。
穴から出て、かなり走って林から出た後、
落ち着いてきたので何があったか尋ねてみた。
人が一人入れるくらいの穴を開けれたんで、中に入ってみたんだけど、
中は虫だらけだったそうだ。
インディージョーンズの洞窟の場面みたいに、壁にも天井にも虫だらけで
身体に落ちてきたので、気持ち悪くなって走って逃げたらしい。
まだ体中を這ってるようで、気持ち悪いというやつらを笑って、
それでお開きになった。


それから半月くらい経って、肝試しのことなんて忘れかけた頃、
俺は友人に呼び出された。
じつは肝試しをしたメンバーのほとんどは、その日はじめて会った人たちだった。
友人の大学の知り合いで、俺だけ呼び出されて一緒に遊んだってこと。
呼び出された先に行ってみると、みんな辛気臭い顔をしている
どうしたんだと尋ねたら、ほとんど何も言われず、「まずこれを見ろ」と言われた。
肝試しのときにとっていた映像だ。
鳥居や穴の中が映る。ついに、みんなが壁を壊しだした。
大きな穴があき、カメラが中に入る。
最初は暗くてわからなかったが、中は大量の虫がうごめいていた。
マックロクロスケが出てきたシーンみたいだった。
何がいるかはわからないけど、光や人の気配でうごめいているのはわかる。
「うわー、ほんとにスゲー虫だな」と言ったら、「もっとよく見ろ」と言われた。
わかりやすいシーンで、一時停止されたものを見せられる。
虫はよく見ると、芋虫のようだった。
でも、芋虫が壁をはえるか?と思って、さらによく見て、俺は背筋が凍りついた。
土にまみれてわかりにくいが、あれは芋虫じゃない。人の指だ!
関節が二つあるし、爪もあるので間違いない。
大小さまざまな指があって、中には腹にゴキブリの足みたいなのが生えてるのもいた。
そのせいで、カサカサ動いて、虫みたいにみえるんだ。
グヒッって変な音で喉が鳴った。振り返ると、何人かが手をあげている。

見ると、上げられた手には全部包帯やギブスが巻かれていた。
何人かは、あきらかに指を欠損しているのがわかる。
どうやら肝試しのあと、参加したメンバーに事故が続いたらしい。
内容はバラバラで、何もない場所でバイクで転んだとか、
バイトでパンの耳を機械で切っていて……とか。
ふと気がついたんだけど、具合が悪くなった女の子がいない。
尋ねてみたら、「あいつは裏切り者だから」と言われた。
事故が相次いだ後で集まったときに、「じつは」と言い出したんだそうだ。
Aが壁を蹴った瞬間、指が転がり落ちたのをみたらしい。
みんな虫に見えていたのに、彼女だけは最初から指に見えていたみたい。
で、なんで最初に教えてくれなかったんだとみんなで責めたら、
学校に来なくなったらしい。
みんなで話し合って、これからお払いに行くと言われて、
俺も参加するようにと言われた。
知り合いの伝手の霊能力者とかいう若い女の人のところにいった。
彼女が言うには、あそこは防空壕ではなく、何か悪いものを封じていた穴らしい。


俺は今、この文章をすごく手間をかけて書いている。
すぐに逃げたし、俺と女の子だけは大丈夫だと思ったんだけどな。
ちなみに、霊能力者の女性も三本右手の指を取られたそうだ。

あのメンバーとはあれから会っていない。
誘ってくれた友人が、去年の冬に精神病院に入っちまったから。
でももう一年経つし、これで終わりだと信じたい。

それと懺悔をひとつ。
穴から逃げ出したとき、木戸を開けっぱなしにしてきちまった。
でも怖いし、もう無駄だろうから、俺は二度とあの場所へは近づかん。
申し訳ない
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2017-07-06 18:23 : 怖い話・都市伝説 : コメント : 0 :
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